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2005年08月10日

開発者インタビュー[3]SLR-93

posted by IRC TIRE MCJ staff at 15:45 | 開発者インタビュー
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去る8月6日(土)・7日(日)、鈴鹿サーキットで『ドリームカップ・ソーラーカーレース鈴鹿2005』が開催された。このレースはFIA(国際自動車連盟)が公認する唯一のソーラーカーレース。まさにソーラーカーレースの最高峰と言える。14年目となる本大会では、IRCの【SLR93】を装着した芦屋大学ソーラーカープロジェクト(A)チームが見事優勝! その【SLR93】の開発に関わったのが、IRC開発技術部の製品開発グループのひとり、草野仁美だ。

2005/8/10 インタビュアー:豊川 大



ソーラーカーレースの足下を支えるIRCの技術。

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2000年、IRCは金沢大学から依頼を受け、ソーラーカーレース用タイヤの共同開発に着手した。その共同開発スタッフの中に、草野の姿があった。共同開発以前は、自転車用の「エコラン」タイヤがソーラーカーレースの主流だった。しかし、「ソーラーカーのマシンは近年著しく性能がアップしました。マシンの性能アップにともない、ソーラーカー専用のタイヤが必要とされたわけです」と、彼女は語る。
 どんなレースもそうだが、ソーラーカーレースにとってタイヤは特に重要だ。ガソリンを使うエンジンと違い、太陽電池から生まれる電力によって車を走らせるので、エネルギーロスをいかに減らすか 勝負の分かれ目となる。それゆえ、タイヤには軽量化が求められると同時に、転がり抵抗を低減させることも必要だ。加えて、「マシンの性能が上がることで、最高時速も飛躍的に伸びました。となると、軽量化・低転がり抵抗だけではなく、今度は耐久性も重要なポイントとなります」。タイヤを軽くして転がり抵抗を低く抑えることと、耐久性をアップさせることは、求められるベクトルがまったく逆。そのため、ソーラーカー用タイヤには非常にシビアなバランスが必要となる。
 共同開発プロジェクトをスタートさせて金沢大学とともに試行錯誤を重ねること約1年、ようやく【SLR93】は完成にこぎ着けた。デビュー戦は2001年8月3日。秋田県大潟村で開催された全日本ソーラーカーチャンピオンシップ(JISC)で見事優勝、同時開催のワールドソーラーカーラリーでは準優勝という快挙を成し遂げた! また、同年11月にオーストラリアで開催されたワールドソーラーチャレンジでは総合10位という好成績を収めた。
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「開発はとても大変でしたけど、結果を出せたことで達成感はありましたね」と草野は嬉しそうに歯をのぞかせる。1年間の試行錯誤の甲斐があってか、IRCの【SLR93】は、金沢大学は当然ながら、他のチームにも採用されるようになった。「ただ、レースの前はいつも大変なんです。ソーラーカー用タイヤは構造がシビアですし、量産するものでもありませんから、毎回1本1本手作業で作ってるんです。今回の鈴鹿では丸2日間、タイヤを作り続けました」と。「でも、そうやって手作業で作ったタイヤだからこそ、レースで結果が出ると本当にヤッター!って感じですね(笑)」。
 最後に、【SLR93】の「93」は、実は草野という名前をあてて「93」にしたということだ。一種のシャレなのだが、それにも増して、彼女の魂が【SLR93】には込められているのだと、筆者は思うわけである──。


【SLR93 鈴鹿仕様】についてのご報告

 すでにご存じの方も多いとは思いますが、ソーラーカー・ドリームカップ鈴鹿でIRCの【SLR93 鈴鹿仕様】にトラブルが発生したことをご報告します。ソーラーカーが飛躍的に進化するハイレベルなレースで、【SLR93 鈴鹿仕様】の完成度が今一歩及ばなかったことは否めません。IRCでは今回の結果を踏まえ、来期に向けた新プロジェクトが現在進行中です。来年の鈴鹿では、より完成度の高い新生【SLR93 鈴鹿仕様】をお見せできるはずです。まだ先の話にはなりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

2004年12月20日

開発者インタビュー[2]WF-930

posted by IRC TIRE MCJ staff at 15:28 | 開発者インタビュー
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1995年[WF-910]、1996年[WF-920]──。
IRCのファイアパターンシリーズが誕生して10周年を迎える2005年、新世代の“炎”がついに誕生! ワイルドかつ大胆なファイアパターンはそのままに、ビッグスクーター用として新たに開発された[WF-930]。
1から10まで、開発のすべてに携わったのは、ひとりの女性だ。草野仁美、IRC入社5年目。彼女が図面上に引いた線の一本一本から、[WF-930]は誕生した──。


2004/12/20 インタビュアー:豊川 大



構想に半年、試作に半年

バイクに乗るのが好きだった。学生時代はツーリングに明け暮れる毎日。女性としても決して大柄な方ではないが、限定解除免許も取得した。そんな彼女が、将来、バイクに関わる仕事に就きたいと考えるようになったのは、当然過ぎる話だ。
「ただ、バイクは好きでもタイヤのことはチンプンカンプン(笑)」と入社当初を振り返る。配属されたのは開発技術部の製品開発グループ。毎日が勉強の連続だった。はじめはタイヤの各名称や構造など、覚えることが山のようにあったという。そんな彼女が入社5年目にしてはじめて開発を一任されたタイヤ、それが[WF-930]だった。構想を練ること半年、試作を繰り返すこと半年。一般ユーザーへ向けたタイヤの開発に、1年もの期間を費やすことは通常ありえない。
「WF-910、WF-920と続いてきた“炎”の伝統を“消す”わけにはいかないじゃないですか」
と草野氏。WF-920をスケールダウンさせるのが一番無難だ。だが、それではあまりに芸がない。結果、開発プロジェクトがスタートしてから、夜遅くまで机に向かう日々が続いた。

「炎をどう表現するか…」。

ワイルドで大胆なデザインとタイヤのパフォーマンスをいかに両立させるか、それが一番のポイントだ。パターンデザインを起こしては細かい修正を加えるという、地道な作業を何度も繰り返した。…半年後、デザインのフィニッシュを迎えたときには、書き直した図面が40枚以上もあったという。そこからさらに試作品を作り、テストを繰り返すこと半年。プロジェクトがスタートして1年後、ようやく[WF-930]が完成した。
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同じ炎をイメージしつつも、フロントとリアの表情はまったく異なる。フロントはハンドリングと安定性を重視し、周方向に流れるようなパターンデザイン。リアはメイングルーブがタイヤのセンターをまたぐという、燃えあがる炎の大胆さをより前面に押し出したパターンになっている。また、リアのパターンを3ピッチにすることで、バイクの後に回ると、フェンダーから覗くタイヤの表面を炎が燃えあがっているように見える。タイヤサイドにも炎。しかもグルリとタイヤを一周している。「タイヤのローテーションに合わせたデザインなので、走れば走るだけ炎は燃え上あがります。もう、ホワイトウォールには負けません!(笑)」。性能面では、ハイウェイでの二人乗りをも想定し、スポーツ系タイヤに使用されているコンパウンドを採用。グリップ力に優れ、ハイスピード での熱ダレも防ぐ。当然、タイヤにかかる負荷を考え、十分な剛性も確保されている。

「入社したとき、いつかは自分が作ったタイヤでバイクに乗りたいと思っていました」と。その思いは[WF-930]で実現する。
ビッグスクーターにまたがり、街をクルーズする彼女を見かける日は、そう遠くない。…よね?草野さん。
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2004年08月21日

開発者インタビュー[1]WF-920

posted by IRC TIRE MCJ staff at 15:07 | 開発者インタビュー
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カスタムメイドのマスターピース[WF-920]。
アメリカンバイクのワイルドなイメージにぴったりフィットするド派手なファイアパターンは見る者全てを魅了する。ほかではおよそ類を見ない。それまでのタイヤのイメージを一変させたといっても過言ではないだろう。ここでは[WF-920]の“誕生”と“これから”の話をしよう。


2004/08/21 インタビュアー:豊川 大



「社内会議では、まったく相手にされませんでしたよ(笑)」

アメリカンに乗るバイカーにとって、ハーレーダビッドソンは特別な存在だ。IRC国内営業部の北村氏にとっても、それは同じこと。12年前に、その憧 れのハーレーを手に入れた。以来、休日には美しい鉄の馬にまたがり、よくツーリングに出かけるそうだ。タイヤを見ると[WF-920]のクールなファイ アパターン。
「実は私も、コイツには一枚噛んでいるんですよ」と、北村氏は少し照れくさそうに笑った──。

 10年前、1本のタイヤが世に出た。それが[WF-920]の前モデル[WF-910]だ。このタイヤの生みの親のひとりが、他でもない北村氏なので ある。ある日、ハーレーユーザーとしてこんなタイヤがあったら、という思いを会議で提案してみた。ハーレーといえばアレン・ネス*1。アレン・ネスといえばフレアーパターンという見た目重視のストレートな発想から、タイヤに炎のパターンはできないか、と。スケッチを描いて会議にのぞんだが、結果は…。
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「全く相手にされませんでしたね(笑)。カッコイイけど絵空事だって」

当時はもちろん、現在でもファイアパターンのタイヤなど皆無に等しい状態。売れるか売れないか分からないものに、企業としてはゴーサインを出すわけにはいかない。「でも、スケッチを見た設計士がオモシロイってことで、ひとり突っ 走って金型まで作っちゃったんですよ」。で、そこからはアレよアレよという間に話が進み、製品化にまでこぎ着けたという。「ある意味、おおらかな時代だったんでしょうね」と氏は懐かしそうに目を細める。

その後、[WF-910]をさらに進化させたモデル[WF-920]が登場。ワイルドさはそのままに、細かくサイプを加えたり、コンパウンドの配合を 変えたりして、より一般ユーザーにも受け入れやすいタイヤとして機能性を充実させた。サイズバリエーションも増え、アメリカンだけでなくFTRなどのトラッカーにも装着することも可能となった。「IRCのタイヤは毎日進化しています。さまざまなテストを繰り返し、データを取り、それをまた製品に反映す る。それの繰り返しがユーザーのニーズに応える近道ですから」。北村氏によると、今年また新たな動きが[WF-920]の周辺で展開されるらしい。おそ らくマイナーチェンジはあるものの、ファイアパターンは受け継がれるだろう。“進化する炎──”。それを支えるため、北村氏は今日も「残業ですよ…(苦笑)」。
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*1マニアからはゴッドとも称されるハーレーカスタムのトップビルダー。ハーレーをベースに世界でたった1台のカスタムバイクを世に送り続けている。

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初代「WildFlare」マーク。タイヤのサイドにも入っている。

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2代目「WildFlare」マーク。よりワイルドな炎パターンになった。